コラム
ウクライナ正教会について
牧師 飯田敏勝
ウクライナ正教会のポール・コロルーク司祭と懇談する機会がありました。日本基督教団の教育委員として、全国の教会学校クリスマス献金の送り先について打ち合わせしたのです。教団としては既に社会委員会が、募金をACT(Action by Churches Together)Allianceを通してささげています。しかし子どもからの献金はウクライナの子どもたちに届けたいということで、それに特化した窓口をうかがうためでした。
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懇談をしていると、同じ情報を見聞きしていてもウクライナ現地の様子もご存知なゆえ当然でしょうが、わたしたちより何倍もその悲惨さや不条理を感じておられます。
何十年もかかるであろう復興のことも今から切に気にされていました。また今回の戦争は「8年前に始まった」のだと繰り返し口にされました。2014年のロシアのクリミア侵攻です。その経緯をわたしたちもしかと受け止めるべきでしょう。
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正直わたしはウクライナに縁もゆかりもなく、今年戦争が始まって初めて意識したというのが実のところです。しかし不意に日常が奪われる非常事態は決して看過できません。そしてポール司祭曰く「ウクライナと日本は遠い国ではない。どちらもロシアの隣りの国だ」というのは、ハッとさせられました。
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日本にも正教会はありますがロシア正教経由で入って来たものであり、今も影響下にあります。例外を除いて、今回の戦争をめぐる正教会の対応はポール司祭には決して納得の行かないものです。その一方でルーツが大いに離れていますが教団を含めて世界中のプロテスタント諸教会からも支援されることは、本当にありがたがっておられました。
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十二使徒の内ペトロはローマに、ペトロの兄アンデレはウクライナのキーウに赴いて教会を創建したそうです。聖書に書いてないのでわたしたちにはただの伝承ですが、そう済まされない立場のキリスト教もあります。教会の依って立つ基が「聖書」だけのプロテスタントと違い、ローマ・カトリック教会ならびに東方の正教会も「聖書」と教会の聖なる「伝統」を併置します。
一番弟子のペトロの後継者の地位は当然重視されますし、町としても教会としても後進のモスクワからすれば十二使徒に根ざすキーウを管轄下に置くことで、正教会の中で自らの地位が高まることにもつながります。
東方の正教会の立場やその考え方について、今まで本で読んだ知識はありますが、実際にその立場の者の生の主張を聞くと説得力が違い、色々と考えさせられます。